《展開》

・令和05(2023)年 –
・塗装した枝

 フォーク状に二股になった長さ二メートルほどの特定の枝を、上下さかさまにし、先端側を広げて、各地の地面や構造物に挿し入れたり挟み込んだりし、主に枝自体の復元力による摩擦で自立させる。一定の構図で写真を撮影して、日時と場所を記録する。設置を繰り返す間に枝は何度か破損し、自宅を含む各地で修理をした。

展示:令和7年 個展「ディマ」Alt_Medium、東京

記録写真集
令和5年6月の開始から令和6年11月時点までの、119か所の設置の記録と、破損・修理の記録を掲載。令和7年3月発行。

設置(40 R06/01/24 1338頃 福島県喜多方市熱塩加納町熱塩)

撤去(40 R06/01/24 1338頃 福島県喜多方市熱塩加納町熱塩)

設置(37 R06/01/22 1135頃 栃木県那須郡那須町高久乙)

設置(102 北海道上川郡上川町層雲峡 R06/08/23 1126頃)

設置・撮影・撤去(125 R07/02/07 0812頃 北海道斜里郡斜里町以久科北)

設置・撮影・撤去(126 R07/02/07 1011頃 北海道斜里郡斜里町遠音別村)

 枝は、自宅の近所の水路端で見つけたもので、誰かが捨てた庭木の剪定枝だと思ふ。

 可逆的に形を変化させることのできる特定の物体と、広い範囲の物理的形態との間に、相互関係を取り結ばせ、相似的イメージと差異とを繰り返し生じさせることに興味があり、制作を続けてきた。枝は、単にある間隔に広げて厳密な二点でものを挟むだけでは自立せず前後に倒れてしまふから、多くの場合、うまく自立させるためには、複数の要素が組み合わさった形態の中に見いだされる適切な位置関係の三つ以上の支持点が必要である。枝を自立させることのできる、さうした条件を満たす箇所を見極めるために、路傍を単に中規模な形態として観察する制作にもなった。

 本作を始めてから、自動車を使って移動する多くの場合に、この枝を持ち運ぶやうになった。長い枝を日常的に持ち運んだり、見知らぬ路傍に設置して撮影したりしようとすると、社会的、物理的、身体的など、種々の抵抗がつきまとった。たとへば、長さの上限を超えてゐてほとんどの公共交通への持ち込みができない、無断で枝を立てることが社会通念上好ましくない場所がある、気候や交通事情が厳しい中で行ふと危険がある、といったやうに。

 さうした抵抗をいなして設置をし、一連の記録に残していったところの地点は、この枝を自立させることのできる形態的条件を満たす場所のうちの、わづかな一部に過ぎない。それらは、枝を扱ふことの可能だった時刻に、生活上のさまざまな背景の中で、私が偶然にさうして見つけたものであり、隣り合ふ通し番号同士の間には、ほかの、無数の 可能な設置個所/可能であった設置時刻 がある。また当然、不可能な箇所/不可能であった時刻 も無数にある。設置と記録の繰り返しによって、この枝の通時的な様相が、風景の広がりのネガとして浮かび上がることを期待してもゐる。